自己破産のデメリット
目次
自己破産を行う事のデメリットは以下に挙げられます。
①一定の財産を失う
「破産手続開始決定」が下りた後、換価するほどの財産がある場合には、破産管財人が選任されて「管財事件(少額管財事件)」となり、財産が処分されますので、自己破産すると、一定の財産を失うことになります。
※換価するほどの財産がない場合は同時廃止となり、財産を失うことはありません。
債権者に配当される財産・不動産
- 99万円を超える現金
- 20万円を超える預貯金
- 20万円を超える株券、ゴルフ会員権などの有価証券
- 20万円を超える生命保険の解約返戻金
- 20万円を超える価値がある自動車
- 受給予定退職金額の1/4~1/8の額が20万円を超える場合、その受給予定退職金の1/4~1/8
②自分名義の借金やローンができない
自己破産をすると、いわいるブラック情報として、信用情報機関に登録されます。各信用情報機関によっても異なりますが「5~10年間」は、金融業者(銀行など)からお金を借りたり、クレジットカードを作成したり、ローンを組むことが難しくなります。
しかし、銀行や郵便局に預金をしたり、公共料金の引き落としまでができなくなるわけではありません。
③一度免責が確定したら、再び7年間は自己破産できない
過去に免責を受けたことがある人は、その後7年間は自己破産できません。
④官報へ氏名・住所の掲載
「法令・告示・予算・人事など」、国が発行する唯一の法令公布の機関紙(国の広報紙・国民の公告紙)である官報に、破産の手続きをした日時と住所・氏名、手続きをした裁判所等が記載されます。ただし、一般人が官報などを見ることはまずありませんし、裁判所から勤務先の会社に連絡がいくようなこともありませんので、会社をクビになるようなことはありません。したがって大きなデメリットともいえないかもしれません。
また、免責決定を受けると破産者名簿からも抹消されます。但し、悪徳金融業者などに悪用(ダイレクトメールなどを送られるなど)される恐れがあります。
⑤住所の移転と旅行の制限
裁判所の許可なしに住所の移転や長期の旅行をすることはできなくなります。自己破産には「破産手続開始決定」と、「免責許可の決定」の2つの手続きを踏まなければならず、1つ目の破産手続開始決定が下りた場合に、債務者(破産申立人)に換価する財産がある場合は、破産管財人が選任されて、 管財事件(少額管財事件)の手続きが行われます。
この破産管財人が選任された場合は、破産手続きが終了するまでは、裁判所の許可なくして「住所の移転(引越し)」「長期間の旅行」はできないことになっています。
ただ個人の場合は、ほとんどが同時廃止(同時破産廃止)になるので、この場合には住所の移転や旅行をするのに裁判所の許可は必要ありません。
⑥価値ある不動産(住宅・別荘・店舗・工場など)を失う
自己破産制度は、債務者(破産申立人)に「換価するほどの財産※1」がある場合には、その財産を処分し、各債権者に債権額に応じて配当を行います。したがって、住宅、別荘、店舗、工場などの不動産は失います。具体的には破産管財人によって任意売却されるか競売にかけられることになりますが、すぐに家を追い出されるというわけではなく、実際に新しい買主が現れるまでは従来どおりに住み続けることができます。
現実には、破産を申立ててから不動産が売却されるまでに半年以上かかることも珍しくありませんので、その間であれば追い出されることはないといえます。
不動産をどうしても手放したくない場合は、自己破産ではなく、その他の債務整理(個人民事再生手続きなど)を選択するしかありません。
※自己破産する場合、「約20万円超の財産(または財産の合計金額が99万円超)」は、換価するほどの財産と見なされていますが、不動産の場合は、それとは関係なく財産と見なされています。
⑦本籍地の市町村の破産者名簿へ記載
自己破産するには2つの手続きを踏まなければなりませんが、1つ目の手続きである「破産手続開始決定」が下りた場合には、破産者の本籍地の市区町村役場が管理している「破産者名簿」に記載されます。
しかし破産者名簿は、戸籍・住民票とは違い、「公的な身分証明書・資格・免許など」を取得する場合に、申請者が欠格事由に該当しないかどうかを確認するために利用される名簿ですので、第三者が、許可もなく勝手に閲覧できるものではありません。
また、2つ目の手続きである「免責許可の決定」が下り、自己破産の手続きが終了すれば、破産者名簿から名前が削除されますので、それほど大きなデメリットでもないかもしれません。
⑧職業や資格の制限
自己破産するには、「破産手続開始決定」⇒「免責許可の決定」の2つの手続きをクリアしなければならないのですが、破産手続開始決定が下りた後、免責許可の決定を受けるまでの間(数ヶ月間)は、「公法上・私法上の制限」を受け、事実上、この期間は以下に該当する職業には就けず、資格も制限されます。
制限される職業や資格などは、・弁護士・司法書士 ・行政書士・税理士・公認会計士・公証人・不動産鑑定士・弁理士・社会保険労務士・有価証券投資顧問業者・宅地建物取引主任者・公安委員会委員・保険勧誘員(損保代理店、生命保険外交員)・警備業者(警備員)・質屋・建設業者・風俗業者・合名会社、合資会社の社員・株式会社、有限会社の会社役員・代理人・後見人・保証人・補佐人・後見監督人・補助人・遺言執行者などが該当します。
以上のように、他人の財産を管理する職業や、資格が制限されます。
ただし、職業や資格が制限されるのは、「破産手続開始決定」から「免責許可の決定」の期間だけですので、免責許可の決定を受ければ「復権」し、再び上記の職業や資格に就くことができます。
⑨破産管財人が付く場合には、管財人に郵便物が配達される
破産管財人が選任されて、管財事件になった場合は、破産者の財産は破産管財人が管理することとなりますので、破産者宛に届いた郵便物も、破産管財人が管理し、中身を閲覧することもできます。
⑩保証人に請求がいく
自己破産は「借金が消えて無くなる」のではなく、「債務者の支払い義務を免除する」事ですので、債務者が自己破産して免責が確定すると、保証人は保証した借金の全て(利息分も含む)を支払う義務が発生します。逆に、保証人のついていない借金(クレジットカード・消費者金融等)は、例え家族であっても返済義務はありません。